ヒューマンリソース

従業員のストレスチェックとメンタルヘルス

ストレスチェック制度とその課題

ストレスチェック制度は、2015年6月25日に公布された「労働安全衛生法の一部を改正する法律」(平成26年法律第82号)において新たに創設され、2015年12月1日からは従業員50人以上の職場で毎年一度定期的にストレスチェックを行うことが義務化されました。

この制度は、従業員のストレスチェック(心理的な負担の程度を把握するための検査)と、医師によるストレスチェックの結果に基づいた面接指導の実施等を事業者に対し義務づけるものです。
従業員自身のストレスへの気づきを促し、メンタルヘルス不調を未然に防ぐ「一次予防」としての効果とストレスチェックの結果を活用した職場環境の改善を目的としています。

株式会社エン・ジャパンが2017年にインターネット上で行った「メンタルヘルス意識調査」によると、メンタルヘルス対策を実施している企業は全体の59%。そして、メンタルヘルス対策を実施している企業が、有効な施策として挙げている1位が「ストレスチェック等による状況把握」です。2位が「産業医の設置」、3位が「労働環境改善」と続きます。
実施した企業に「ストレスチェックの制度に意義があると思いますか?」との質問に対しては、「意義がある(大いに意義がある:9%、どちらかといえば意義がある:37%)」46%、「意義がない(あまり意義はない:18%、まったく意義はない:5%)」23%という結果でした。

ストレスチェックには意義がないと感じている企業からは、「自己申告型のメンタルヘルスを確認させるだけのスキームであり、企業にとって一番抑止したい、無自覚の後に突然発症するメンタルヘルスの予防にはなっていない」「高ストレス判定でも指導を申し出る者がほとんどいない。また、指導を申し出る者が、自分が希望する異動のために制度を利用しているように感じる」など、本来の目的を果たせないという厳しい声が挙がっています。

参考:メンタルヘルス対策についてアンケート調査 ※回答数:697社

日々の従業員の心理的な負担の程度を知るには、年1度きりのストレスチェックだけでは把握しきれないという意見も多々あるのではないでしょうか。医師によるストレスチェックの結果に基づいた面接指導の実施だけでなく、日々の業務に関するストレス状況についての把握や集団分析などは企業として大きな課題となってくるのではないかと考えられます。従業員自身のストレスへの気づきを促し、メンタルヘルス不調を未然に防ぐ「一次予防」としての効果を高めていく上で、ストレスチェック制度に対する課題と期待は大きいと考えます。

精神的不調による損失と必要な取り組み

近年、精神的な不調が原因で長期の休職や離職に至る労働者は増加しています。2019年度の精神障害の労災請求件数は2,060件となり、前年の1,820件から240件増加し、統計調査を取り始めてから過去最高となりました。支給決定件数は509件で、認定率は32.1%となっています。*1

(*1)参考:厚生労働省令和元年度「過労死等(※1)の労災補償状況」取りまとめ

過大なストレスを抱えて精神的不調に陥ると、最悪の場合は自殺を遂げてしまう場合もあるため事態は深刻です。OECDは、日本はうつ病関連自殺により25.4億ドルの経済的損失をまねいている*2と推定しています。

(*2)参考:ウィキペディア (Wikipedia): フリー百科事典「日本の自殺」

2005年頃から、自殺は個人の問題ではなく社会の問題であるとの認識が関係者の間で共有されるようになり、その理念に基づいた新しい国家戦略策定の具体的な取組が開始されています。日本では、2026年までに自殺死亡率を2015年と比べて30%以上減少させることを最終目標として12の重点施策をあげており、企業としてもこの分野での取り組みは更に重要性を増してくるのではないでしょうか。(「心の健康を支援する環境の整備、心の健康づくりの推進」職場におけるメンタルヘルス対策の推進「勤務問題による自殺対策」長時間労働の是正、職場におけるメンタルヘルス対策の推進、ハラスメント防止対策)

参考:厚労省「自殺総合対策大綱~誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現を目指して~」

しかし、「ストレスチェック制度による労働者のメンタルヘルス不調の予防と職場環境改善効果に関する研究」では、高ストレス者のうち医師面接を受けた者は少なく、高ストレスだったが医師面接を受けなかった理由として以下のものがあげられます。(141名)

  1. 面接指導がどのように役立つのかが分からなかった(36%)
  2. 面接指導の必要性を感じなかった(29%)
  3. 時間がなかった(20%)

ストレスチェック制度情報についてはこちらから確認できます。

参考:ストレスチェック制度による労働者のメンタルヘルス不調の予防と職場環境改善効果に関する研究

企業によるストレスチェックの実施や産業医の設置、労働環境改善を行われたとしても、高ストレスにある従業員が適切な精神保健医療福祉サービスを受けられる状況がなければ、ストレスチェック制度の目的を果たす事はできません。
産業医を含む、医師面接の内容や有用性に関する情報を提供し、従業員からの医師面接の申し出を増やすことや、企業側が従業員の医師面接のための時間の確保を行うことが、医師面接実施率の改善につながるのではないかと思われます。

同時に、メンタルヘルスへの対策が包括的に行われることも重要になってくるでしょう。
高ストレスにある従業員にとってはすでに適切な医療サービスを自身で探すこと、適切な人への相談をすること等も難しい状態になっている場合が多く、対応する人やサービスが増える程、本人は混乱する場合があります。高ストレスにある従業員への仕組みづくりも、企業にとっては必要な取り組みになってくると考えています。

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